基本的にZEH住宅は、脱炭素社会へ向けて「住宅部門における省エネを促進する目的」として同じ方向性に向かっています。
ただし、「ZEH住宅」を1つの基準として規定する必要があることの裏返しとして、「規定されていないコト」も実はあります。
また、家づくりにおいてZEH住宅を基本として、性能にこだわって数値だけで比較をしていると落とし穴もあります。
今回は、最終的なコストのバランスまで考慮した形で、後悔しないように考えるべきポイントをまとめました。
まずは、今回の記事のポイントです。
・ZEHはゼロ光熱費住宅ではなく、計算上と実生活で使うエネルギーは異なっている。
・ZEHの条件には、気密性能は考慮されていない。
・ZEHの条件で表れてくる数値は、実際に暮らす体感上の快適性までは考慮し切れていない。
1.ZEHのキホン(おさらい編)
まずZEHとは、主に2つのステップをクリアした住宅のことを指します。
1つが、「規定以上の断熱性能」+「一般的な家より20%以上省エネの住宅設備を導入」して、元々使うエネルギーを少なくしていること。
ここでは、断熱性能がある程度良いことから、冷暖房の効きがよく必要以上にエネルギーを使わなくても快適に過ごせる住宅、が前提になっています。
石川県においては多くの地域が一般地である5〜6地域という区分にあてはまります。
具体的には、家から出入りする熱の平均値を表したUA値という数値が、0.6W/k・㎡以下であることがZEH住宅の1つ目のステップです。
そしてもう1つが、年間で使うエネルギー以上に、太陽光発電でエネルギーを創り出していることです。
一般的な住宅に比べて、省エネで過ごせる住宅ではあるものの、使ったエネルギー以上の発電を行って実質的にエネルギーを帳消しにする、という考え方です。
細かい規定などはありますが、大枠としてはこの2点を掴んでもらうとZEH住宅がご理解いただけるかと思います。
ZEH住宅の詳細は、最近話題のZEH住宅ってどんな家?ZEH住宅の概要とメリットデメリットを解説!の記事でもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
2.ZEH住宅の思わぬ落とし穴
今回の記事では、人気のZEH住宅の思わぬ落とし穴を解説していきます。
「ZEH」もパーフェクトな考え方ではないことを知ってほしく、ご自身に「ちょうどいいZEH」を考えるきっかけになればと思います。
2-1.「ZEH住宅」は必ずしも「光熱費ゼロ住宅」ではない
ZEH住宅は「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略ですが、エネルギーがかからない家=光熱費がゼロと思う方もいらっしゃいます。
前述のように、太陽光の発電で使っているエネルギーを実質的に帳消しにするだけで、太陽光が発電しない夜間や雨天時は、電力会社から電気を購入します。
そしてココには2つの落とし穴があります。
1つは、ZEH住宅としての計算に「家電などで使う消費電力・エネルギー」は含まれていないことです。
一次消費エネルギー消費量という計算を使って、一般的な家よりどれくらい省エネか?を計算しますが、そのときに算出される「その他の一次エネルギー消費量」はZEHの計算には使いません。
これは、テレビやパソコンなど住宅自体の性能に関係ない買電エネルギーは含まないことで、住宅自体の性能を評価するために行っています。
ただ、実際の生活で使うエネルギーとは乖離している、という点が落とし穴です。
もう1つは、太陽光の売電単価が下落していることと、買電の単価が上昇していることです。
太陽光は、現在急激な上昇を続けている買電を減らすために必要なアイテムですが、目に見える売電の金額は下落しています。
ゼロ光熱費を実現していこうと思うと、太陽光だけでなく蓄電池やエコキュートの昼間運転との連携などで自家消費率を高めていく必要があり、ZEHの条件とは少し異なってきます。
詳しい説明は割愛しますが、いずれにしても必ずしも、ZEH=光熱費ゼロではありません。
2-2.ZEHに気密性能は関係ない
ZEH住宅は、断熱性能や省エネ機器に性能値は考慮されますが、気密性に関する項目はありません。
断熱性能が高くても隙間が多い家では、外気が入り込んで来ると快適な家になりにくいですよね。
しかし、この点については「ZEHの条件」には入っていません。
全国的に見ても気密性能を邸別で測定している会社が少数派であることから、この条件を省いたのかも知れませんが(筆者の推測です)、断熱と気密は相関関係にあります。
そして断熱性能はあくまで机上の計算ですが、気密性は実際の工事の精度に左右されるため、しっかりとした工事ができていないと性能値をお客様へ提示できません。
ZEHはクリアしている、だけでなく気密性を測定している会社かどうか?も落とし穴と言えますが、フジタでは全棟で気密測定を実施しています。
3.後悔してしまうZEH住宅にならないために
上記では代表的な落とし穴を紹介しましたが、最終的に後悔しないZEHにするための設計ポイントを紹介していきます。
3-1.コストバランスは適正?
昨今、高断熱性能ではHEAT20・G3レベルの断熱性能の住宅も出てきています。
断熱性能を追求することで、確かに快適性は向上していきますが、そこまで体感に差が出てくるかどうか?は、冷静に考えた方がよいでしょう。
コールドドラフトなどの体感などを考慮すると、G2レベルまでが体感でわかるレベルとも言われています。
上図のZEHを建てた方へのアンケートで、断熱性能別に「冷暖房の効きが悪いと感じたか?」という質問をした結果です。
冬も夏も、G3グレードとG2グレードの差は、数%の方の体感差となっていることがデータで客観的にわかっています。(青色の空調の効きが悪いとは感じていない層と、赤色の空調の効きが悪いと感じている層)
また、ここから断熱性能を付加していくと当然コストもさらに跳ね上がってきますので、断熱材のために家を建てているわけではなく、暮らしよい家のために新築を建てることを忘れないようにしましょう。
3-2.数値だけ追い求めていると住みにくい家に?
断熱性能を追い求めていくと、窓の面積を減らしがちです。
理由は、窓より壁を多くした方が外皮計算上、断熱性能が高くなるからです。
窓はどうしてもガラス部分から熱が逃げやすいのですが、普通に生活をしていて窓が少ない閉塞的な家では少し残念ですよね。
窓を大きくとることで、ほんの少し性能値は下がってしまいますが、性能はしっかり確保しつつ、開放感のある気持ちのいい新築をフジタでは提案していきたいと考えています。
受験の偏差値ではありませんが、数値だけ追い求めるのではなく、普段の生活を楽しく・快適に・満足度が高く暮らすことができるか?を優先してご提案しています
窓を大きくとることで、日射を取り込みやすく、冬は日中にやさしい温かさを体感できます。
また、外皮計算では表れない気密対策や熱橋対策もしっかりすることで、実際の体感ベースでの快適性をフジタでは考慮しています。
熱橋対策であるW断熱工法を少しご紹介します。
4.外皮計算に表れてこない真の断熱性
出典:フジタ・W断熱工法
断熱性能は、外皮計算という計算を行って算出しますが、落とし穴としては、最終的に算出されるUA値はあくまで「平均値」であり、実際の温かさまで考慮できていません。
その代表的な例が、「熱橋」です。
しっかり断熱材を充填していても、構造躯体を伝って外の熱が、室内へ伝わってくる現象を言います。
これは特に熱を通しやすい鉄骨は顕著で、熱橋対策をしっかりされている会社もいます。
フジタはW断熱工法として、構造躯体の外側をぐるっと囲う形で外側に断熱材を入れて、この熱橋対策を施す工法も用意しています。
全棟気密測定と併用し外皮計算に表現されない快適性を、フジタでは提供していきたいと考えています。
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